板橋区役所前駅2分、大山駅10分、板橋駅15分、板橋本町駅18分の板橋の心療内科精神科
精神科専攻医のピットフォール
ピットフォールを記載の意図
専門医を取得するために心療内科、精神科の修練を積んでいる陥りやすいピットフォールを列挙します。少しでも患者様が救われると良いという思いで記載します。
専門医研修を始めると様々な情報がなだれ込んできます。その中から有益な情報を見極める必要があります。
どの情報も良さげなことを言うのでどれを選択して良いか迷ってしまうことがあります。良い指導医に巡り合えずに誤った選択をすることもあるでしょう。
診療方針
・医師としてエビデンスに基づいた情報を提供し、患者様と一緒に対処法を考えるという方針をとる。
医師が一方的に決めつけた治療方針を押し付けるのではなく、選択肢とメリットデメリットを伝えた上で一緒に考えるというスタンスで望むことで患者様の治療意欲は高まります。
・治療効果の限界を意識する。
患者様の心理的な悩みを完全に解決することができないことは少なくありません。抑うつ気分を完全によくしようと思いが強すぎると、どんどん薬の量が増えていって効果は出ずに副作用のみが問題となります。
職場でうまくいかずに憂鬱になっているという場合はその人の仕事能力の限界ということも少なくありません。
すべての人が特定の職場に適応できるとはいえず、能力に見合っていないことも少なくないでしょう。
薬物療法
・安定している処方を副作用が小さいという新薬に無理に変更しない。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬で睡眠状況が改善しているという理由で依存性の小さなデエビゴ®(レンボレキサント)に変更すると睡眠状況が悪化することがあります。
もちろん、患者様が希望された場合は変更を考慮しても良いでしょう。
・統合失調症の急性期の治療にエビリファイ®(アリピプラゾール)、レキサルティ®(ブレクスピラゾール)といったドパミン受容体部分作動薬の初期治療は避ける。
エビリファイは世界中のガイドラインで推奨されており、製薬会社の営業力の高さから良い情報を吹き込まれます。
体重増加の副作用が小さい、遅発性ジスキネジアの発現が少ないといったメリットもあります。
しかし、エビリファイは発売当初はホームランか三振かと評価された薬剤で効果のある患者様とそうでない患者様に分かれました。
その後、アメリカでうつ病の補強療法の適応がとれて大きく販売数が増えました。
また、エビリファイは効果が出るまでに4週間が必要であると製薬会社から説明されます。統合失調症の急性期には速やかな効果が必要でしょう。
統合失調症の急性期でどうしても速やかな効果が必要な際は、オランザピンやリスペリドンを選択するのが無難でしょう。
・抗精神病薬が多剤になっている処方をエビリファイ®(アリピプラゾール)、レキサルティ®(ブレクスピラゾール)に切り替える。
精神科の単科病院に長期入院していた患者様では抗精神病薬が多剤になっていることが少なくありません。
錐体外路症状が出ているのをみるとエビリファイやレキサルティに処方変更を検討する医師は少なくありません。
最近、販売された薬に変更すると身体の硬さは軽減しますよと説明すると患者様も変薬を希望されるでしょう。
しかし、多剤の抗精神病薬を長期間使用すると過感受型精神病と呼ばれる病態が生じます。
多剤の抗精神病薬でドパミン受容体をブロックすると、それに対する身体の反応としてドパミン受容体の数が増加します。
その状態で効果が弱いエビリファイやレキサルティに変更すると統合失調症の陽性症状は一気に増加します。
変薬でなくてエビリファイやレキサルティを追加することでも陽性症状は増悪します。
エビリファイやレキサルティは他の抗精神病薬よりも受容体への親和性が高いです。
ドパミン部分作動薬で他の抗精神病薬よりも受容体への拮抗作用が弱いエビリファイやレキサルティに受容体を奪われるためです。
多剤の抗精神病薬を変薬する際も第一世代抗精神病薬からオランザピンやリスペリドンへの変更を検討した方が良いでしょう。